不動産管理 特集

平均入居期間の計算式と分析手法

更新日:

 

久しぶりに特集。
今度のセミナーで話す内容ですがちょっと抜粋を。

みなさんは賃貸物件の平均入居期間を把握していますか。

その物件の平均入居期間がわかれば、いろんなコスト管理(費用便益分析)や賃料の増減根拠として賃貸経営に役立つんじゃないかと思い、計算式にしてみました。

ネットで「平均入居期間」と検索しても、「ワンルームの平均入居期間」や「ファミリータイプの平均入居期間」などのざっくりした情報しか出てきません。

物件によって入居期間は変わるわけですから、その特定の物件の平均入居期間を算出できたら便利ですよね?

ということで、「入居率」「解約率」の2つのデータから、その物件の平均入居期間を算出してみます。

 

このテーマは深く研究していきたいので、みなさまのご意見、ご指摘、事例などお寄せください。コメントお待ちしてます。

2020/7/21更新
2020/7/30更新

 

 

 

この記事では、

  • 平均入居期間の計算式
  • 解約周期の計算式
  • 平均空室期間の計算式
  • 計算結果から分析できるコスト管理、賃料判断
  • コメント

を説明します。
お時間ある方はコメント呼んでいただけるとうれしいです^^
そんな時間ないという方は「まとめ」に計算式かいておきます。

 

 

 

 

平均入居期間の計算式

それでは次のようなスタイリッシュ(笑)なアパートで試算してみましょう。

 

(仮称)なごやアパート
・総戸数:5戸
・解約率:20%
・空室率:10%(入居率90%)

 

それではいきなり結論です。

平均入居期間を次の計算式で求めます。

入居率÷解約率=平均入居期間(年)

上記例のなごやアパートの数値で計算してみると、

入居率0.9÷解約率0.2=4.5(年)

この物件の平均入居期間は4.5年ということがわかりました。

 

 

以下では、計算式をもっと深く理解したい人向けに説明します。

 

平均入居期間を算出するためには、

  1. 解約周期を算出する
  2. 平均空室期間を算出する
  3. 解約周期から平均空室期間を引く

という流れになります。
解約周期-平均空室期間=平均入居期間

 

イメージ

 

 

解約周期

それでは順に計算してみましょう。はじめに「解約周期」を求めます。
賃貸借契約では、「解約→空室期間→入居期間→また解約」 という流れを繰り返します。

この解約から解約までの期間を計算します。

また、本記事に記載する分析では、「解約率」「空室率」を使用しますので、このデータが無い方は先にこのふたつを分析してください。

 

解約率

解約率の計算式は次の通りです。

年間の解約件数÷総戸数=解約率

例)総5戸のアパートで、年間1室の解約があった。
→解約1件÷総5戸=20% →解約率は20%

 

空室率

空室率にもいろいろありますが、ここでは「期間空室率」をおすすめします。

期間空室率の計算式は次の通りです。

空室月数÷総月数=期間空室率

例)アパート全体で貸すことができる”総月数”は5室×12か月で60か月。このアパートで計6か月間の空室が生じた。
空室6か月÷60か月=10% →空室率は10%

※日単位で計算するとより細かく空室率を分析できます。

 

注意

これらのデータはある1年だけを抽出すると、解約・空室が多い年もあれば少ない年もあるため、結果がブレます。普段からデータを蓄積していれば「過去5年間の解約率」などとして算出できるため、より信頼性が高まります。

 

 

解約周期

それでは「解約周期」を計算してみましょう。

 

解約周期の計算式

1÷解約率=解約周期(年)

 

例のなごやアパートでは、

1÷解約率0.2=5

となり、解約から解約までの期間は5年であることがわかりました。

 

イメージ

解約率20%ということは、総5戸のアパートでは年に1室の解約が生じることになります。平均すると、解約から次の解約までの周期は5年ということになります。

 

なごやアパートの解約周期は5年ということがわかりました。

 

 

平均空室期間

次に平均空室期間を求めます。

解約後、次の入居が決まるまでに平均してどれだけの期間を要するか、という指標です。
手元には「空室率」と「解約率」の情報しかありません。

計算式は次の通りです。

空室率÷解約率=平均空室期間(年)

 

空室率10%、解約率20%のイメージ

1室あたりの空室期間を求めたい(図の場合、D号室の空室期間)
でも、空室が何室あるかわからない。(手元のデータは空室率と解約率のみ)

空室すべての空室期間の合計=全入居可能期間(12か月×5室)×空室率10%=6か月・・・A
空室数=全戸数5室×解約率20%=1室・・・B

空室期間の合計A÷空室数B=1室あたりの空室期間(平均空室期間)

 

とすると、

(12か月×5室×空室率)÷(5室×解約率)=平均空室期間

 

左辺を約分して、

(12か月×空室率)÷解約率=平均空室期間
(1年×空室率)÷解約率=平均空室期間

 

よって、

空室率÷解約率=平均空室期間(年)

 

なごやアパートを例にとると、

空室率0.1÷解約率0.2=0.5(年)

平均空室期間は0.5年(=6か月)ということがわかりました。

 

 

参考まで、空室率10%・解約率40%のイメージ
空室率0.1÷解約率0.4=0.25年 →平均空室期間3か月

 

 

 

平均入居期間の計算

あとは、解約周期から平均空室期間を差し引けば平均入居期間が算出できますね。

 

  1. 解約周期:1÷解約率0.2=5(年)
  2. 平均空室期間:空室率0.1÷解約率0.2=0.5(年)
  3. 平均入居期間:5年-0.5年=4.5年(4年と6か月)

 

以上から、平均入居期間は4年6か月ということがわかりました。
月数になおすと54か月です。

この物件は、一度契約すると平均して54か月の入居が見込めるということになります。

 

これまでの計算式をおさらい&変形

 

解約周期-平均空室期間=平均入居期間

(1÷解約率)-(空室率÷解約率)=平均入居期間

 

さらに左辺を変形して、

(1-空室率)÷解約率=平均入居期間

 

で、(1-空室率)はつまり入居率ということだから、

入居率÷解約率=平均入居期間

 

になります。

以上が、この記事の最初にでてきた計算式の根拠となります。

入居率÷解約率=平均入居期間(年)

 

ふぅ。以上が平均入居期間の計算の流れです。
続いては、この計算結果でなにが分析できるのか、応用編です。

 

 

 

応用編

平均入居期間がわかったら、何が分析できるのでしょうか。
もちろん、平均入居期間を少しでも延ばすことが家主の収益を改善することは言うまでもありません。

 

賃料増減が与える期間中収入への影響

例題

家主のあなたは、入居検討者から賃料値下げの交渉を受けています。
検討者は、すぐに入居するので月額1,000円の値引きをしてほしいと要求しています。
・あなたはこれに応じますか?
・同時に正規賃料で契約したいが賃料発生は1か月後という検討者が現れたらどうしますか?

 

賃料減額(または増額)することによって、この契約から得られる賃料総額を計算してみましょう。

 

期間中収入の差

なごやアパートの基準賃料は65,000円だと仮定します。

月額64,000円に値下げして契約した場合、約54か月の入居が見込めるわけですから、
64,000円×54か月=3,456,000円
総額3,456,000円の賃料収入が予想される訳ですね。

一方、賃料値下げに応じず、基準賃料のままで契約した場合、
65,000円×54か月=3,510,000円
総額3,510,000円の賃料収入が見込めます。

その差額は、54か月で54,000円
これが多いか少ないかは個人の感覚によりますが、
上記はあくまで同じタイミングで契約できた場合の差額です。

 

空室許容期間

空室許容期間:こんな言葉ありません(笑)

前述の1,000円値下げを要望している人は、すぐに入居すると言っています。
この検討者を断ると、次に契約できるのはいつになるだろうかと考えてしまいますね。

値下げ後賃料の64,000円で期間中に得られる賃料は、総額で3,456,000円と書きました。
仮にこの申し出を断り、少しあとに正規の65,000円で契約できたとします。
めでたしめでたし。

でも、契約までに空室ロスが生じています。
一体どちらが得だったのでしょうか。

 

64,000円の場合の総額3,456,000円を、正規の65,000円の賃料で回収できる期間は、53か月と4日です。
3,456,000円÷65,000円=53か月と4日

64,000円の賃料なら54か月で3,456,000円を得る
65,000円の賃料なら53か月と4日で3,456,000円を得る

その期間の差は、26日となります。
つまり、64,000円ですぐに入居すると申し出た人を断って、正規の65,000円の契約を待つとした場合、
26日後に契約(賃料発生)できれば総収入は同額になります。

26日間までの空室なら許容できるということで、勝手に空室許容期間と名付けました。

このリミットを超えると、「値下げして契約しておけば良かったな~」となるかもしれませんね。

 

 

それではこの空室許容期間の計算式です。
上記の図では、1,000円値下げすると54か月で54,000円の値下げに相当。
この54,000円は基準賃料のxか月分に相当する。x=54,000÷基準賃料

月額減額×平均入居期間÷月額基準賃料=空室許容期間(月)

例)基準賃料82,000円の物件に対し、賃料減額2,000円の交渉が入った。
減額2,000円×平均入居期間54か月÷基準賃料82,000円=1.31か月
(僕は簡易的に1月を30.4日として計算します)→1か月と9日
1か月と9日間かけても基準賃料で入居が見込めなかったら2,000円減額して契約したほうが得ということになります。

補足

この分析は、期間中の収入のみを比較したものです。
賃料を値下げするということは物件価格も下げる要因になります。

 

まとめ

平均入居期間(年)=入居率÷解約率
平均空室期間(年)=空室率÷解約率
解約率=年間の解約件数÷総戸数
空室率=空室期間÷賃貸可能総期間

平均入居期間が算出出来たら、ここからいろんな指標に反映できます。
応用編を更新していきますのでお楽しみに。

 

 

更新予定メモ

  • 空室許容期間の算出
  • 総収入の比較
  • 値引きすると・・・ (売買価格の減少VS総収入)
  • 期間中総収入に占める手残り額の割合(単身VSファミリー)
  • 賃料減額VSフリーレント
  • 賃料減額VS「ADアップ」

 

エクセルデータでも提供できますのでほしい方はお問合せください。

みなさまコメントへご指摘、ご要望お待ちしております^^

 

 

コメント

2020年4月、民法改正によって賃貸借の原状回復義務が明文化され貸主の負担する費用はこれまで以上に増加した。よくある賃貸経営セミナーでは「入居率アップ」とか「満室経営」などのフレーズが並び、「平均入居期間」についてはほとんど説明がないが、今後はいかに長く住んでもらうかという点に注目して賃貸経営をしていかなければならなくなる。なぜなら、1つの新規契約の裏には「退去日~工事手配~完了までの空室期間」「原状回復工事費」「募集後の空室期間」「仲介手数料」「広告宣伝費」の費用がかかり、そのコストは明確に貸主が負い、これを転嫁するための礼金や償却費を借主に求めることが厳しくなってきたからだ。常に収入管理とコスト管理のモノサシをもって賃貸経営にのぞめたらと思い、特集をくんでみた。

平均入居期間を算出することは”長く住んでもらうこと”が重要だと意識づけるためにも効果的といえるし、これまで適当に賃料設定や値引き対応をしていた人も賃料に対する考え方の基準が備わると思う。いまだに勘と経験に頼ってどんぶり勘定する不動産業界において自分の基準を持っておくことは非常に重要。たとえば、管理会社や仲介店は「契約しやすい賃料水準」を提案する。内装業者は「フルリフォーム」を提案する。家主は「最大賃料」をめざす。このように、関係者それぞれの相反する思惑によって異なる意見の中から何が適正なのかを判断していかなければならない。今後は家主と同じ視点に立つプロパティマネージャーの役割がさらに大切になる。『入居率90%だが解約率が50%近い物件』と、『入居率は80%程度だが解約率が10%の物件』はどちらが良い物件だろうか。仮に一棟収益アパートの購入を検討する場合に、解約率や入居期間を基に投資判断する人がどれぐらいいるのだろうか。本記事で取り上げた概念は今の不動産業界には浸透していないが、売り物件の提案書に「平均入居期間」や「解約率」の記載があったとしたらより信頼性の高い計画をたてられるのではないか。

 

みなさまのご意見お待ちしております↓

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