コロナ被害 飲食店の賃料減額交渉で思うこと
コロナで不動産どうなる
新型コロナの影響について、飲食業界に的をしぼってコメントする。飲食店経営・家主・管理会社などから聞き取りした現場の声、事例。コメントはあくまで貸主側、管理会社側の視点からの個人的意見。
随時更新予定
2020/3/18更新
2020/3/27更新 家主の選択肢
2020/3/30更新
2020/4/2更新 具体的にいくら減額できるか【家主の事情】
2020/4/9更新 飲食店撤退の動き
2020/4/12更新 飲食テナントに気をつけてほしいこと
2020/4/14更新 賃料負担軽減策【家主向け】
2020/4/16更新 歓楽街テナントアンケート結果
2020/4/17更新 家賃保証会社を付けている時の注意点【家主向け】
2020/4/21更新 飲食店に見切りをつける家主
2020/4/22更新 給付金を見据えた減額【家主向け】
2020/5/7更新 家主・管理会社の事例
2020/5/7更新 行政の家賃補助
2020/5/8更新 ついに、国から家賃補助か
2020/5/28更新
※テナント向け 家賃支援給付金
2020/7/4更新 速報 家賃補助【事業者向け】
2020/7/25更新 申請時はコールセンターに確認
2020/8/6更新 コロナ第二波 現場の声
コロナ被害の事例
飲食店の声
- 売上3~4割減(2020/3/18)
- 売上7割減
- 売上半減
- 一人も客がないこともある
- 損益分岐点を割り込んでいる
- 宴会シーズンなのに新規予約なし、予約キャンセル多発
- 閉店、企業倒産の情報も入ってきている。
- 廃業を視野に入れている(2020/4/10)
飲食店の対応
- 各種補助金、セーフティネットの利用
- 一時的に閉店する企業も
- 賃料交渉(詳細後記)
- 緊急事態宣言後、一時休業を決めた。(2020/4/10)
- 店たたむ。居ぬきで引き取ってくれる人を探している。(2020/4/13)
事例
- 郊外よりも都心部で被害多い。(飲食店経営者)
- セミナー、会合、懇親会等を一切禁止する企業が増えている。(各企業)
- 都心部では企業の会合や宴会等の比率が高いため、会合主催者の立場から予約キャンセル、定例会合の実施を中止。
- 郊外では日常的な食事をする人が多く、都心に比べ被害は少ない。(飲食店経営者)
- 郊外の飲食店、スナックなどは未だに満席に近い店舗も見られる。都心部での会合がなくなったため地元で飲食しているのではないか。(一般)
- 都心部でもテイクアウト専門の飲食店は被害少ない。(ビジネス街に立地)
賃料条件の交渉と貸主の対応(事例)
- 家主に賃料減額の交渉をしたが全て断られた。(飲食店経営。5店舗経営)
- 家主に賃料減額の交渉をしたが断られた。家主も借入返済があることが理由。(飲食店経営)
- 賃料交渉をしたところ、前年比売上減であることを証明できる書類を求められ、それをもって協議すると言われた。非常時にこの回答は厳しい。回答を先送りにされていると思う。(飲食店経営)
- 大規模商業施設の運営企業にに賃料交渉をしたところ、一定の協力を得られた。基本賃料+歩合の契約の場合、歩合部分の一定の協力を得られた。
- 大手不動産会社では一切を断られた。
- 2か月間のみ賃料の30%を減額するという合意を得られた。
- 1か月間、賃料を全額無償にする合意を得られた。1か月後に再協議。
- 家賃交渉したとたんに、逆に賃料値上げの要請を受けた。(2020/4/15)
- 半年間の賃料無償を要望したら、家主を怒らせてしまい、一切応じられず「出ていけ」と言われた。(2020/4/10)
- 交渉に応じる代わりに、定期賃貸借契約に切り替えることを条件とされた。(2020/4/13)
聞き取りしている範囲では、賃料交渉に応じないという回答が多い。条件交渉に応じるとした事例の中では「賃料減額」が多い。この他に「支払い猶予」や「保証金相殺」という事例もある。(2020/3/18)
当初の対応から意識が変わってきている。賃料減額・支払い猶予に理解を示す家主が増えてきている。(2020/4/2)
”家賃減額に応じるかわりに定期賃貸借契約に切り替えることを要請された”というケースは特に慎重にご判断ください。ご自分で判断せず、信頼のおける不動産会社や法律に詳しい方にご相談ください。この点は今後社会問題になりそうな気がします。(2020/4/13)
交渉に失敗した事例も増えてきています。特に管理会社を挟まず、家主と直接交渉しているケースに多いようです。(2020/4/15)
賃料交渉に関する私見 2020/3/16
まず、今回のコロナ被害は飲食店自体には問題がなく風評による敬遠であること。コロナ収束の目途が未だたっていない状況であり、飲食店は赤字で経営を継続することは厳しい。一定の協力を得て飲食店経営を”継続”できるのであれば、家主側は検討すべきだと思う。本来、今回のような飲食店の被害・売上減少を”賃料減額”という形で家主が負うべき理由はないが、家主の中には”痛み分け”として交渉に応じる人もいる。その理由は、仮に閉店、倒産があった場合、その後の新規出店の見込みは低いと思われるからである。コロナが収束しない限り、新たに出店する飲食店は皆無に近いのではないだろうか。したがって、この対応は”共存”という意味では十分検討する余地のある対応だと思う。もちろん、家主側も融資の返済がある。賃料収入を原資に返済をするので協力したくても応じられない家主もいることはわかってほしい。
その上で、、、
賃料交渉は最終手段まず、家主への賃料交渉は最終手段であることを理解いただきたい。飲食店は各種補助やセーフティネットを活用し、それでもどうにもならないという段になったら家主に相談するべき。
飲食店が厳しいのは家主も管理会社も承知している。飲食店の中には、電話で「営業が厳しいので賃料減額してほしい」と簡単に言ってくる人もいる。中には賃料を免除してほしいと言ってくる人もいた。正直、これには誠意がないと言わざるを得ない。各種補助やセーフティネットは活用されたのか、どれだけの売上減少があり、来客数の減少があり、賃料交渉が受け入れられた場合の今後の展望は、役員報酬は。こう質問したら答えられるだろうか。
賃料値下げするということは、その分家主の収入が減るということ。
今回に限らず、過去に何度も賃料交渉を受けてきたが、賃料減額という非常に大きなテーマに対し、協議に臨む姿勢に見られない飲食店の方は本当に多い。
月額〇〇円の契約をとりにいくときに、何の資料も展望もなく臨むか、ということ。
先日の事例を紹介ある飲食店経営者の人から、現在の経営状況や来客数、昨年対比、収支明細を提示の上、「コロナのことで相談がある」と連絡があった。当方は賃料交渉だろうと身構えていたが、相談の内容は”セーフティネットの申請に際して家主側の合意が必要になる書面があり、これに応じてほしい”とのこと。更に詳しく話を聞くと、お店がこれまで実施してきた対応を事細かく説明された。当方はこの申し出を断る理由もなく、すぐに合意した。ひょっとすると今後は賃料交渉が入るかもしれない。それでもこの人は”まず店側でできる対応”をなんとしても行っていくという姿勢が感じられた。
少なくとも別の方とは違う印象を受けた。
先の「賃料を免除してほしい」といってきた方は、過去に何度もごみ管理等の改善要望を出しているのに聞く耳を持たない。双方の信頼関係の下に賃貸契約がなりたっているとすると、こういった日常の行為に照らして非常時の対応が変わってきてもおかしくないのではないか。存続していくために辿り着いた最終案が”家賃の免除”であるのか、それともダメ元であわよくばの交渉なのか。
みんな厳しいことはわかってる。お互いに長く共存していくためには何が大切か。
2020/3/18 更新 事業用不動産を扱う同業の方と商談中、コロナの話題に。現在、飲食店の出店ニーズはほとんどないとのこと。既存店に関しては賃料の減額交渉も多いものの、貸主側の懐事情によってなかなか応じられない状況であるとのこと。その中でも、愛知県内の某ビルではテナントからの要望がないのに、家主側から「賃料半額の申し出」があったらしい。これはまさに”痛み分け”といったところか。このビルは飲食店中心であるため今退去されると家主側の損害も大きいと判断したのだろう。家主も苦しいが、この対応は店舗継続のための心強い手助けになったことだろう。この決断はどの家主もが実行できることではないし、どのような結果をもたらすのかは今の時点では判断がつかない。
本記事の反響が大きいので、しばらく現場の声や事例を更新していくことにします。
家主の選択肢
2020/3/27 各オーナー・テナントはそれぞれ事情が異なるためここで紹介している内容はあくまで参考に留めてください。
当記事のアクセスが増えています。きっと各地で同様のお悩みを持った方が多いのだろうと思われます。昨日は「賃料減額の交渉を受けているがどのように対応するべきか」と同業からの相談。今回のコロナ被害は誰も経験したことがなく、個別の事情も異なることから残念ながら”これが正解”という助言はできません。各所にヒアリングした結果をお伝えし、オーナーのとりうる選択肢をいくつか提示させていただきました。通常考えられる対応は次の通り。(1)賃料交渉に応じない。 (2)賃料〇%の減額に応じる(期間を定めること。まずは1か月~2か月程度か) (3)預り保証金から相殺する。(回復後に充当する取り決めをする。保証金不足のリスクあり) (4)賃料の支払い猶予(減額ではなく猶予。期間を定める。賃料回収不能のリスクあり)
コロナの影響で飲食店を閉店するという話も少しですが耳にするようになってきました。また、新規出店も極端に少なくなっていると聞きます(店舗専門仲介)。
2020/3/31 僕が関与している某オーナーさんも賃料の減額を決めました。期間は2か月、30%減額。ついでに、日常的に問題を起こすテナントさんでしたので改善の誓約と今後問題が起きたときの対応方法を取り決めました。
賃料減額に応じられる限度(家主の事情)
2020/4/2 それでは具体的に賃料はいくらまで減額できるのか。家主側が減額に応じるとしても限度があります。一般的な投資基準で購入された物件の収支分岐点からオーナーが減額できる最大値を試算してみました。ご興味ある方は下記リンクご参照ください。
国交省 賃料支払いの猶予を要請
コロナの影響踏まえ、ビル賃料支払いの猶予を要請/国交省国土交通省は3月31日、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、不動産関連団体に向け、加盟事業者が飲食店等テナントに対して賃料支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置を行なうよう周知を依頼した。飲食店をはじめとするテナントの中には、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動が縮小し、入居するビル等の賃料の支払いが困難となる事案が生じていることから、今回の措置を講じた。
猶予を要請というのはどういうことだろう。まだ業界団体からは具体的な要請は来ていません。「賃料支払いの猶予=家主が返済できない」となりますから借入返済猶予などの措置がないと応じられないです。また、今日の知人の話では、飲食店で働く社員さんへの給与の支払いが滞っているケースも出始めている様子。賃料交渉時の基礎知識としてテナント側の事情と家主側の事情を双方が理解することも必要だと感じます。
飲食店テナント撤退の動き
2020/4/9 M&A案件や権利譲渡(居抜き)などの情報を扱っていますが、最近目に見えて飲食店の会社売却・権利譲渡の件数が増えてきています。最近オープンしたばかりの商業施設の店舗の売却情報も入ってきました。いつ収束するかもわからない状況であるならいっそのこと撤退してしまおうという判断に至ったのでしょうか。
家主のみなさまにお伝えしたいのは、賃料減額交渉があるうちは「飲食店をなんとか継続したい」という想いがあり、生き延びるための手段を追求している状況だということです。撤退後の貸室に新規入居は見込めません。少なくとも新規賃料は大幅に低い賃料設定にせざるを得ないでしょう。
飲食店テナントさんに気をつけてほしいこと
2020/4/12 最近、ネットでも賃料交渉についての記事を多く見かけるようになってきました。当記事にもアクセスが集中していることから、各地で同様のお悩みを抱えている方が多いことが伺えます。僕は家主側、テナント側それぞれから相談を受けることがありますが、家主の本音をここに記載しておきます。
世間では「飲食店は家主に賃料交渉をしよう」とか「家主は賃料減額に応じるべき」という論調になっており、ついには国土交通省から不動産業界団体に対して、(何ら補償の提示はないままに)賃料支払い猶予をするようにとの要請がありました。(なお、団体から不動産会社へは要請はまだ来ていません)
「賃料減額・猶予に応じない家主は悪」とまで言い出す人もいます。
家主の本音は、賃料減額・猶予に応じたくないのです。中には「ならば調子の良いときは賃料を多く支払ってくれるのか」とボヤく人もいます。先にも書いたように、テナントさんの言動や過去の対応によって家主の印象・対応が異なることは間違いありません。
テナントさんには少し落ち着いてほしいです。
毎日のように相談を受けますが「賃料減額されて当然」かのように交渉に臨むことはやめてください。あくまで”お願い”というスタンスで相談してください。また、他の物件の事例を引き合いに交渉することもやめたほうが良いでしょう。家主の中には損得勘定抜きに「そんな言い方なら出てってもらって構わん」と言い出しそうな性格の方もいますからね。
賃料負担軽減策【家主への支援】
2020/4/14 昨日、菅官房長官より賃料負担軽減策についての発言がありました。賃料減免に応じた家主が負った損失を来年度の固定資産税を全額免除することで間接的にテナント側を支援する狙いとのこと。
家主側が賃料の割引などを伴って”売上半減(前年比)”した場合に、来年度の固定資産税を全額免除
前年比賃料半額とはどういう定義でしょうか。先日の僕の記事(コロナ被害飲食店賃料減額いくら?)を参照していただくとわかるように、例えば3か月間賃料を半額にした場合の”年間の”売上減は▲12.5%です。【賃料減額0.5×3か月÷12か月=0.125】
”年間で”半減という前提なら借入返済がある家主ならすで破綻している水準です。来年の固定資産税の時期を待たずにキャッシュアウトで破綻です。
実際は”○月~○月の3か月間の売上が半減”などになるかもしれませんが、それにしても不動産賃貸業にとっての売上半減は致命的な水準であり、固定資産税免除だけでは焼け石に水です。
家主を支援して間接的に事業者を助けるという意図なら、家主側の借入返済猶予のしくみをつくらなければ効果は見込めません。加えて、借入はないけど賃料収入を生活費にあてている家主もいます。見方をかえれば、給与が減ったことと同じなのです。ビルオーナーがあたかも大金持ちであるかのように見当違いして、「非常時は弱者に協力せよ」といわんばかりの主張は間違いです。
正式な発表を待ちたいと思います。
名古屋歓楽街アンケート結果 錦、女子大小路
2020/4/16 名古屋の歓楽街(錦三丁目、女子大小路)エリアのテナントアンケート結果が出ました。(名古屋人なもんで地元ネタすいません)飲食店とナイトクラブに分けて集計されているので、今一番厳しい業態の生の声を知ることができます。名古屋以外のエリアの方でも飲食店業界の現状を知る上では参考になるのではないでしょうか。
小池知事自粛発言(3/30)以降の売上減飲食店:売上61%減ナイトクラブ:売上81%減
飲食店よりもナイトクラブでの影響が顕著に表れていますね。僕が直接テナントから聞いた事例でも8~9割減と言っていましたのでどこもこのような状況なのでしょう。
休業・廃業を検討している飲食店:30%ナイトクラブ:70%
経営に関する悩み(多い順)資金繰り売上の減少スタッフ給料支払い家賃の支払い補償がないことスタッフの人繰り、減員
外部リンク:歓楽街アンケート調査の結果
【家主向け】家賃保証契約を付けている家主の注意点
2020/4/17 (家主・管理会社向け)賃料滞納に備えて、家賃債務保証会社による保証を付保している家主さんへ本来、賃料未納があった場合は保証会社へ連絡し、代わりに弁済してもらいます。保証契約では、”未納があったのに○日以内の連絡を怠った場合、弁済されません”というとりきめがある場合があります(免責)。この取り決めは保証会社によって異なるので保証会社との契約書の内容を確認してください。
で、この度のコロナ被害によって賃料減額または支払い猶予を借主と合意した場合は、事前に保証会社の契約内容の確認をとっておくと良いでしょう。家主が支払い猶予をしている場合は、保証会社からの弁済は受けられないでしょうが(勝手に猶予しておいて保証会社から弁済を受けられるはずがありません)、それだけでなく、将来の本当の滞納時にも保証を受けられなくなる場合があるかもしれません。「以前、支払いがなかった時に保証会社への通知を怠っていますので、免責(払いません)です」なんてことになったら最悪です。数多の保証会社の契約書を確認したわけではありませんが、契約の内容によってはありえることだと思います。
また、保証会社の契約にオプションで賃料収納代行がセットになっている場合があります。これは毎月自動で借主から賃料を自動引落するサービスです。家主・借主間で賃料猶予等の合意がされているのに、保証会社へ連絡していないといつもどおり賃料が引き落とされます。口座に残高がないと、保証会社への滞納となって手数料や金利が発生する場合があります。
飲食店テナントを見捨てるという対応
2020/4/21 大変心苦しいのですが実際に起こっている動きとして報告します。家主の中には、今回のコロナ禍を受けて”飲食店に物件を貸すことはリスク”と考え始めてきている動きがあります。この記事のテーマである、賃料減額・免除・猶予は、今後も継続して借りていただくための時限的協力という目的があります。ところが、前記リスクを強く認識した家主は、他業態テナントへのコンバージョン(転換)を検討します。つまり、賃料減額に応じず、退去してもらい、別の業態に貸すということです。(理由はともかくとして、賃料減額に応じる代わりに定期建物賃貸借契約への切替を条件とする場合もあります。)都心部繁華街では一棟まるごと飲食店ビルも珍しくなく、最近では大手不動産会社からも続々と新築飲食ビルが供給されてきました。もちろんこれまでは調子よかったのですが、今回のような未曾有の事態が起こると、家主・投資家心理にも影響を与えることだろうと思います。 ※定期賃貸借契約、コンバージョンについては長くなりますので他記事にまかせます。
【家主向け】減額する場合は給付金の要件に注意
2020/4/22 (家主法人・管理会社向け)賃料減額によって前年比売上が50%減となると持続化給付金の支給が受けられます。※まだ正式開始前。詳細が変更になる場合があります。
この給付金も視野に入れて減額内容を決めることも重要かもしれません。該当すると、最大で法人は200万円、個人事業者は100万円の給付が受けられる。賃料の額によっては十分な家主側メリットとなり、結果的に賃料減免に応じやすくなるといえます。
計算式
前年の総売り上げ-(前年同月比50%減の月【任意に選択可】×12か月)=売上減少分 給付対象
任意の1か月を選択し12か月を乗じて計算するので、たとえば1か月だけ賃料半額にした場合でも、
【昨年売上】月額賃料100万×12か月=売上1200万
【今年売上】月額賃料50万×12か月=売上600万
法人の場合200万の支給となります。実際に減額しているのは月50万円ですから家主側も減額に応じやすくなります。この場合50万円×4か月までならまかなえることになります(いつも言いますが、テナントさんはこれを理由に交渉しないでくださいね)。なにが言いたいかというと、「4割減×5か月」と「5割減×4か月」は同じ額ですが、上記給付金の支給を受けるためには”その配分を調整する”ことで、結果的にテナントの継続営業を支援しやすくなるということです。すなわち、5割減にあえて応じることで有利になるケースがあるということです。すべての家主に該当する給付金ではないと思いますが、家主専業で賃料総額がそこまで大きくない方はチェックしてみてはどうでしょう。→個人家主は注意してください。対象が事業所得であるため個人の不動産所得は対象外です。これをあてにして減免するなら先に持続化給付金を受けられるか確認してから検討してください。
経済産業省 持続化給付金PDF(外部リンク)https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin.pdf
家主・管理会社の対応事例
2020/5/7 某大手管理会社では40件ほどの飲食店テナントから賃料減額交渉あり。減額に応じたオーナーは3割。賃料減額に応じる場合で、保証契約が付保されている場合は事前に保証会社との協議も必要となる。手続きも煩雑になるため、一旦全額を支払ってもらい、減額分を返還するという手法を取っているらしい。また、別の会社では、賃料減額に応じるものの(減額は営業継続のために応じるものであるため)その後、早期に解約した場合(たとえば1年)は、減額分の賃料を請求するとした。
各社、試行錯誤して一定のルールを定める動きがあります。不動産賃貸業家主や管理会社は、コロナ禍による賃料減額交渉の対応で時間と労力を割いており、僕も4月は交渉業務ばかりしていました。上記例では、賃料減額交渉に対して全て統一した対応としているようです。賃料減額〇割、〇か月、一旦賃料全額を支払ってもらい、減額分を返還するなど。
行政の家賃補助
2020/5/7 賃料減額期間を2か月程度としたことには理由があって、国や行政の補助の動きを見極めるためでありました。ここ最近、各地で行政からの賃料支援が広がりつつあります。例えば神戸市では家賃減額に応じた家主に対して減額分の8割を補助(最大200万円)するとしています。このような支援があれば家主も減額に応じやすくなり、結果的にテナントの営業継続につながると言えます。とはいえ、各地行政の対応はまちまちで、僕が相談を受けたテナントの中には、賃料減額に応じてもらえず廃業を決意した方もいらっしゃいます。
ついに国から家賃補助か 3分の2!!
2020/5/8 コレは心強い! ついに国から補助の動きが出てきましたね。詳細の続報を待ちましょう。
対象者・・・大幅に減収となった事業者対象業種・・全業種助成額・・・家賃の3分の2上限額・・・中小企業は月額50万円 個人事業主は月額25万円助成期間・・6月以降の半年分大幅に減収とは・・単月の売上が前年同月比で5割減
”家賃の3分の2”について、どのように証明するのか、また既に減額に応じている場合はどうなるのか。数日前の自民党案では3割減収が対象としていたが反映されるか。
家主、管理会社の対応としては既に減額に応じている方は見直しが必要なケースもあるでしょう。減額期間を6か月とか長めにとってしまった方もいます。僕はオーナーさんに2か月として提案していましたが、結果的にちょうど良かったのかもしれませんね。いずれにしても、家賃の3分の2補助は大きい。既に撤退を決めてしまったテナントさんもいますが、半年間家賃補助が受けられていたなら結果は違っていたのかもしれません。貸主借主双方にとってメリットがありますから、ダメ元で解約撤回の提案をしてみようと思います。
家賃支援給付金(続報)
2020/5/28 (2次補正予算の成立を前提として)テナント事業者に対する「家賃支援給付金」
- いずれか1か月の売上高が前年同月比50%以上減
- 連続する3か月の売上高が前年同月比30%以上減
給付額は法人・個人によって異なり、月額賃料の金額によっても計算方法(給付率)が変わります。
※注意点上記の売上減は5月~12月までの間に該当しなければならないようです。
※注意点申請時の直近の”支払い家賃”を基準にしています。家主との間で一時的な減額合意ができている場合などは取扱いに注意する必要がありそうです。続報を待ちます。給付率3分の1~3分の2を半年間、テナント事業者に対して支給なので、大変効果の大きいものです。
家賃支援給付金(続報)
2020/7/4 速報です。ついにまとまってきました。
経済産業省 家賃支援給付金に関するお知らせhttps://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html?fbclid=IwAR2D0WchdolEsbUF9z1R6BhkebO89_2cBeqw_E4uwe5F3De5gNyf2oas5Io
まだ不明な点もありますが、要件に該当する方は準備を始めてください。
- 事業用に使用している月極駐車場は対象となるのか。
- 代表者個人の不動産を借りている場合でも対象となるのか。
- 実際に支払っていた額であるため、賃料減額受けていた場合は正規の賃料ではなく支払った賃料が対象になりそうなので注意。
- 申請時の直近1か月の「支払賃料」であることに注意
申請時はコールセンターに確認
2020/7/25 ブログの内容が正しいとは限らない 家賃支援支援給付金の申請受付開始に伴いテナントから続々と問合せを受けています。手続きが二度手間になってはいけないので事前にコールセンターに書類を確認してからのほうが良いでしょう。基本的にはテナント側が準備する書類で申請手続きは完了できるのですが、”賃貸借契約が期間内でない”場合などは貸主の証明が必要になります。例えば賃貸借契約書の契約期間が2年間になっていて、初回期間満了後は自動更新とするとなっている場合。契約書だけでは現在もその契約が継続しているか判明しないため、「家主から承諾をもらってきてください」と求められます。ここで注意したいのが、「家主等」の「自署」を求められているという点。「家主等」とは管理会社の承諾でもよいのか(→コールセンターに確認したところ、事情により可とのこと)。「自署」とは会社のゴム判でもよいのか(→コールセンターに確認したところ自署はゆずれないとのこと) 某ブログでは、「ゴム判」でも可で、「コールセンターにも確認をとった」と書いてありました。コールセンターにこのことを尋ねると「間違い」なので自署してくださいと回答。ブログに書かれていることが間違っている場合もあるので、二度手間を避けるために事前にコールセンターに確認をとっておきましょう。その他、途中で賃貸人名義が変わっている場合なども証明を求められます。
コロナ第二波 現場の声
2020/8/6 当地名古屋でもコロナ感染者がすごい勢いで増加。中心部の飲食店事情を記しておきます。いわゆるナイト系の飲食店では閉業することを決めた店も増えてきた様子。以下は人づてに聞いた繁華街のビルオーナー・テナントの本音
- 第一波はなんとか凌いだがもう限界。店をたたむ(個室居酒屋)
- 店を閉めることも考えるが、人生かけてこれしかやってこなかったので今後の仕事が不安(クラブのママ)
- 第二波が読めないので、家主の合意を得て「撤回可能な解約通知」を出した。
- 退去通知が続出。賃料収入が3割減になった。(ビルオーナー)
- 第一波の最中にビルの売却を決めた。早めに売っておいてよかった。
- 引き続き賃料減額を続ける。このままでは家主側もヤバイ(ビルオーナー)
みなさんの声をお聞かせください
いろんな方から相談を受け、なるべく客観的な助言をするように心がけていますがまだまだ現場の声を聞きたいと思っています。
飲食店のみなさん、家主のみなさん、不動産業者のみなさん、現場の声をコメントください。