不動産売却にかける時間と価格の関係

不動産売却にかける時間と価格の関係

今日は空き家の売却相談を受けて現地調査にいってきました。先行して売却査定書を提出していましたが、現地調査の結果、諸経費が重くのしかかってきそうです。
購入ニーズの乏しいエリアですので売出の価格設定に頭を悩ませています。

相場価格と査定額と売出価格

仲介業者は売却査定をして、近隣相場や土地の規模、マーケットを精査して、所有者に対して売却査定額を報告します。その仲介業者に仲介を依頼するとしても、必ずしも提示された価格で売り出さなければならないわけではありません。2000万円の査定額であっても、たとえば2200万で売り出すことは所有者の自由です。不動産はこの世にたったひとつのものですから「息子たちに近くに住んでもらいたいから」「隣地だから」などの理由からポンと高値で決まることもあります。これはご縁ですから、すぐにそういう方が現れるとも限らないし1年後にご縁があるかもしれません。
売却にたくさんの時間をかけられるなら、そのご縁と巡り合う可能性が高まります。

相場の1.5倍で土地を売る

僕が過去に扱った案件でも、上記のように相場より1.5倍の売り出しをしようと提案したことがあります。その土地は住宅地としては若干大きかったため、土地規模による減額補正をして査定しました(ちょうどよいサイズよりちょっと大きいため買主は不要な面積にお金を払いたくない)。当時は1坪あたり80万円が近隣相場。査定額の根拠をお見せしたうえで、「査定額はこの通りですが、いくらで売り出すかは所有者さんの自由です。このあたりは住宅地として人気のあるエリアですからちょっとチャレンジしてみませんか」と提案してみました。ここで問題になってくるのは、売却までにどれだけの時間をかけられるか、です。この所有者さんは特にお金に困っている訳でもなく、せっかく売るならチャレンジしてみようということで1坪あたり120万の価格で売り出ししました。当時、「高すぎるだろ」とそのエリアの複数の業者に言われたのを記憶しています。結果、半年ほど時間がかかり金額の交渉はあったものの坪110万円で成約しました。相場の1.3倍で成約したことになります。価格にすると2000万円の差です。
買主さんも相場より高いことを承知で購入したようです。「高いからこそ(他の人に買われずに)自分が買えたと前向きに考えることにするよ」と笑顔で言っていました。
 
一般的に、不動産の実際の売買価格(成約価格)は売り出し価格(募集価格)より高い金額で決まることはまずありえません。募集した価格から値段交渉があって下がることはあっても、「募集価格より〇〇万円高く出してもいいよ」と買主から買い上がることはありません。
 
また、査定額が相場よりも著しく高いという逆のケースもあります。
例えば、所有者が複数の仲介業者に査定依頼したとします。仲介会社は「他社にこの案件をとられたくない」と考え、通常の相場よりも高い査定をして「当社ではこの金額で売却できますから当社に担当させてください」と提案します。所有者は高く売りたいのでその会社に仲介の依頼をします。すると、本来の相場よりも高い価格で売り出すことになります。上記で書いたように相場より高い金額でたまたま売れることもあると思いますが、プロセスが違います。そして、売れずにしばらくすると「値下げさせてください」と連絡がきます。所有者さんは「その金額で売れるっていったから依頼したのに・・・」と思うでしょうね。
 

相場の半額で土地を売る

逆に、売却に時間をかけられない方もいます。
これも過去に扱った案件ですが査定額1400万円の売り土地で、売主は早急に換金が必要であり、また売却後の契約不適合責任(当時は瑕疵担保責任)のリスクを極端に嫌がっていました。また、測量未実施のため最短でも2か月後の決済となります。
そこで売主は、安くてもいいからおたくが買ってくれないかと相談してきました。当社が購入する場合は、契約不適合は免責(売主はリスクなし)で良いとすることはできますが、価格が極端に下がってしまいます。当社もリスクと利益を反映した価格でしか購入できないのです。僕は正直に「その価格で売るのはもったいないです。少し価格を下げて再募集してみませんか」と提案しました。それでも売主は一刻も早く換金したいとの理由から査定額の5割ほどの価格を当社に提示してきて、当社で購入させていただくことになりました。(実際はそこから当社負担で解体、残置物処分、立木抜根、測量、地中調査、整地を実施)
 

売却期間の長短と成約価格の関係

上記2例は極端かもしれませんが、時間的な価値という視点から考えるなら見込みがない限りは通常の適正査定価格で進めてよいと思います。相場より高い価格で成約できるのはよほどの好立地、高ニーズ、希少エリアに限られます。そうでなければ無理して高額で購入しませんから。
1年後の経済情勢は誰にもわかりませんし、想像もしていない感染症や大規模災害が起きて今と事情が変わっているかもしれません。高齢の方の1年はもっと重要で、そのときには体調を崩して旅行やお食事にいけない状態になっているかもしれません。時は金なり。早期に換金して他の運用に回す、または贅沢するなどお金に対して時間的視点も社会変動のリスクも考えていきたいですね。
 
時間的価値については、機会があれば別記事にしたいと思います。
「1年後にもらえる10万円は、今すぐもらう〇円と同等の価値がある」
このような比較手法もありますので損得を時間的価値で判断できる方にはご納得いただきやすいかもしれませんね。