領収書をメールで送って印紙節約

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2022/04/07
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不動産管理
抜粋
メール本文「代金受領しました」領収書として有効?
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「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」に拍手を送りたい。
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もくじ

民法改正+デジタル社会形成整備法によって収入印紙を節約できるか

書面を作成するとかかる税金=印紙税
不動産業や建設業など、高額商品を扱う業種では収入印紙って大きな出費ですよね。仮に6億円の収益一棟マンションの売買を行う場合、売買契約書に貼付する収入印紙は(特例があっても)契約書1通につき16万円、2通で32万円。代金受領に伴う領収書を発行すると収入印紙15万円。大事な税収ですが、書面にしなければ印紙税がかからないとなると節約したくなっちゃいますよね。
 
それに、いつも思うのは印紙税法って結構ややこしい。売買契約なら一覧から参照するだけですが、継続的な取引の契約書や、請負が混在している委任契約などは「印紙いくら貼ればよいのだろう」と悩んで、調べるだけで時間をロスしてしまいます。

収入印紙は節約できるからこそ悩む

書面にしなければ収入印紙不要 金額を乗せなければ200円 相殺の領収書は内訳記載すれば不要 いずれ返還するお金なら200円 継続取引ならあえて期間を短くして節約 工事請書を省略又は別の方法で通知して不要 賃料の領収書を台帳にして節約 などなど
不要にできたり節約できてしまうだけに結構真剣に抜け道節約方法を考えてしまいます。
 
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少し古いものですが印紙税だけの解説でこのブ厚さ・・・
 
デジタル社会形成整備法や民法改正によって、デジタル(電磁的記録)によっていろんな書類がやりとりされるようになれば、印紙代の節約はもとより「印紙をいくら貼ればよいか」「節約できる記載方法はないか」などと考える時間が一切なくなるので非常にありがたい流れです。拍手を送りたい!
 
契約書関係もデジタル化されていますが、不動産業界ではまだ宅建業法など他の法律のしばりによって書面にしなければならない業務があります。徐々に法整備されていっていますが”国交省が定めた方法”であることなど、未確定の部分もありますので今日の時点では契約書については割愛します。また、印鑑についても省略されてきていますが、印鑑の必要性も感じていますのでこれもまたの機会に。
 
それでは、不動産業界における領収書と収入印紙の関係を考えてみます。
 
 

不動産業で領収書を発行するケース

不動産業で領収書を発行するケースは、
  • 売買代金の受け取り
  • 工事代金の受け取り
  • 賃料の受け取り
  • 敷金の預かり
などがあります。
 
不動産は高額ですから代金を支払った側はその証拠として領収書を求めます。これは当然ですよね。法律にもしっかり定められている権利です。
しかし、不動産の現場では特別に合意をして領収書を発行しなくてもよい取決めをすることがあります。特に不動産の取引に慣れている専業法人なら「契約書もコピーでいいよ」「領収書は発行なしで」などといって、印紙代を負担することを極端に嫌う会社もあります。(この気持ちはよくわかります)
 
下記は特約で領収書を発行しないと定めるケースです。

売買契約書に領収書不発行の特約

必ず領収書をもらいたいときは念のため契約書に記載しておくのもよいでしょう。もともと領収書をもらう権利はあるけど「印紙代もったいないから発行できません」「印紙代負担してくれるの?」と後から高圧的に言われてもめんどくさいので。※領収書発行は義務。発行者側が印紙負担。
  • 売主は、手付金及び売買代金等を受領後、すみやかに領収書を発行し買主へ交付すること。
 
領収書を発行しない」ことを前提に取引するのであれば、その内容を契約書に記載しておきます。代金を払った人は領収書を求める権利がありますので、契約書上でこれを排除することになります。
  • 売主及び買主は、代金の支払いを銀行振込によって行う場合は、振込明細票又は通帳記録をもって領収書の発行に代えることとし、領収書は発行しないことを合意した。
 
さすがに現金を受領する場合はなにも記録が残らないので領収書ほしいですよね。支払い方法を現金以外に指定しておくのも有効です。

賃貸契約書に領収書不発行の特約

賃料を支払ったことを証明するために領収書の発行を求められることがあります。特に法人契約や、社宅などで一部個人負担分がある場合など、社内清算する必要がある方などは領収書が必要なのかもしれません。まず、賃料は現金支払いではなく銀行振込か引落に限定します。そして領収書は発行しませんと契約書上で合意しておきます。
  • 賃料等の支払い方法は銀行振込又は口座振替に限るものとする。(本文に記載があれば不要)
  • 貸主及び借主は、本契約における毎月定額の賃料等の請求書は発行しないことを合意した。但し、水道光熱費等の変動費がある場合は、貸主又は貸主の指定する者は請求書を発行するものとする。また、賃料等の支払いを銀行振込または口座振替サービス等によって支払う場合は、振込明細票または通帳記録をもって領収書の発行に代えることとし、個別に領収書は発行しないことを合意した。(固定賃料なら請求書も発行しない場合も)
 
 
上記は、これまでの「領収書は紙書類で発行する」ことが一般的であった時代のお話です。領収書の発行をしたくない理由は手間と印紙代です。
デジタル社会形成整備法によって領収書の発行が容易になればこれらの考え方も変わってくるかもしれません。
繰り返しになりますが、印紙の節約をする方法があるばかりに、ひと手間かけて、弁済者にとっての利便性や証拠能力を犠牲にして、領収書や契約書を作成しないという手段がとられてきたのです。
 

電磁的方法で領収書を交付する

さて、本題です。従前の民法では、債務の弁済者は弁済と引き換えに弁済受領者に対して「受取証書」つまり領収書の交付を請求することができるとされていましたが、デジタル社会形成整備法第1条により受取証書の内容を記録した電磁的記録の提供を請求することになりました。令和3年9月1日施行済。
 
改正民法 (受取証書の交付請求等)第四百八十六条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。 2 弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
 
いままでは、書面による領収書の交付請求、交付義務が規定されていました。今回の改正によって、弁済者は、領収書を書面交付か電子的方法による交付かを選択して請求できるようになりました。注意点は弁済者(代金を支払った側)が選択できるという点です。領収書を発行するのは代金を受領した側ですので、弁済者の了承なく勝手に電磁的方法によることはできません。また、弁済者側から「電磁的方法で領収書を発行してほしい」と要求されても、領収書発行側がPC操作できない方などの場合はこれを断ることもできます。

電磁的方法によることの合意

では、どのように電磁的方法を用いることの了承をとっておけばよいでしょうか。やはり、売買契約書や賃貸借契約書に記載しておくのが間違いないでしょう。
  • 売主及び買主は、代金の支払いに対する領収書の交付を電磁的記録の提供により行うことを合意した。(PDFファイル、電子メール本文への記載など)
 

領収書をPDFやメールで送ってよい?

電磁的記録の提供とは、PDFとかEメールとかでも良いのでしょうか。
電磁的記録の形式については民法上は定めがなく、弁済者が特定の形式を指定しなかった場合は、一般的な端末にで表示されるPDFやメールや、特殊な形式であっても弁済者が利用できるもの(アプリ上の画面など)で提供すれば足ります。※今後開始される「インボイス制度」に対応した情報も載せるようにしておくとよいですね。
 
▼法務省のQ&A 
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このように、法務省のQ&AでもメールでOKと書いてあります。
メールでも良いとするとかなり気軽に交付できる一方、代金授受の証憑とされてしまうので、社内で「領収書の電磁的交付」についてルール厳格化しておかないと怖いですね。あるいは、契約書に記載する際に、内容を限定しておくことも重要だと思います。
  • 当社から発行する領収書は〇〇の方法に限るものとする。
「おたくの社員さんから領収メールきてるから認めた(追認)したんですよね」なんて主張されたらめんどくさいです。(※実態のない請求でも認めたと主張されるおそれ)
 
 
ということで、
今後の不動産売買契約の領収書はデータでやりとりさせていただけるとうれしいです。
ただし、不動産取引においては民法以外の宅建業法や国交省令などで電磁的記録の形式が別途定められる場合があるかもしれないのでご注意ください。