コロナ第3波 飲食店の賃料減額交渉で思うこと

ロナで不動産どうなる
コロナ被害(第3波)の影響について飲食業界に的をしぼってコメントする。飲食店経営・家主・管理会社などから聞き取りした現場の声、事例。コロナで家賃の値下げを求められた方、飲食店物件の管理会社、家賃交渉への対応事例として。
 

飲食店と賃貸業の現状

コロナと共存する飲食店

全世界的に甚大な被害をもたらしている新型コロナ。歴史的な1年であったことは間違いないだろう。経験したことのない脅威に対して各飲食店は生き延びるために様々な対策を講じてきた。国や自治体からの補助金・協力金を活用し、一部の家主は賃料減額に応じ、飲食店はなんとかこの苦境を乗り切っていたかに見えた。

GoToトラベル停止の影響

GoToキャンペーンは飲食業に良い影響を与えた

飲食や観光業の経済的被害を補うべく開始されたGoToキャンペーン。実際に飲食関係者にその効果を聞いた。複数業態を展開する企業の話では、地域の名物料理や高価格帯の店舗では客入りが回復したという。対して居酒屋の業態では効果は限定的であったとのこと。GoToトラベルを使って旅行に来る人達は地域の名物や名産品をもとめて来店する。
今年の半ば頃から客数が少しずつ戻ってきていた。慣れによるものかもしれない。GoToキャンペーン開始後から県外の客入りが増えてきた。
結果として、GoToキャンペーンは支援策として良い効果があったという。

GoTo停止と時短要請

GoToトラベルキャンペーンは年末年始の期間中、全国で一斉に停止された。また、地域によっては飲食店等の営業時短要請が発表された。
GoTo停止の発表を受け年末の予約が大量キャンセルとなっている状態。当地名古屋では先行して繁華街エリアの飲食店等に時短要請が出され、その後対象地区が拡大され、最終的に愛知県全域が時短要請対象となった。この影響で、ある店舗は年末に見込んでいた売上の5~7割減を覚悟しているという。
時短要請に従わず夜間の営業を続けている店舗もある。協力金を得るよりも営業を続けたほうがメリットがあると判断したのだろう。

賃料減額交渉の状況

当社が扱う飲食店物件でもテナントからの悲鳴が聞こえてくる。コロナ初期に賃料減額(又は免除、猶予)に応じたテナントからも再度賃料減額の相談が出始めた。対する家主側も大変厳しい状況であり、応えたくても応えられない人も多い。
大手企業が展開する複合施設や飲食専門ビルの対応は大きく二分している様子。賃料減額に応じる姿勢を見せている企業と一切受け付けない企業。協議に応じるとしている物件でも、面談の機会は得たものの消極的な回答多いとのこと。

解約の状況

閉店、廃業という選択。
東京商工リサーチが実施したアンケート(12/17)コロナ禍の収束が長引いた場合に廃業(すべての事業を閉鎖)する可能性中小企業の飲食業種のうち32.7%があると回答している。その内、1年以内に廃業すると答えた企業は43.3%
当社の取扱う飲食向け物件では次の通り。※分母が少ないのであくまで参考として
  • 閉店:40%
  • 完全閉業:10%
上記の区画のうち、新規出店の状況は次のとおり。
  • 別の飲食店が出店:0%
  • 別の業態が出店:75%
  • 空室のまま:25%
飲食仕様の物件や飲食専門ビルは別業態への転換が難しい。

都心部の賃貸状況

繁華街、都心部でも空き区画が目立つ。特に立地が良く賃料が高い大型飲食店は人件費・賃料等の維持費が直接的に利益を押し下げる。これらに類する店舗は退店の判断も早かったように思う。特に大手企業は早々に解約通知を出してきた。「全国○○店一斉閉店」というニュース良く耳にしたことだろう。
都心部でも空き区画はその後のテナントが決まらず、空いたままになっている物件も多い。
ビルの新築計画から竣工オープンまでの数年のタイムラグは、コロナ被害を想定しているはずもなく、ビルが完成したものの当初予定していたテナントのキャンセルや誘致が進まず新築施設でも空きがみられる。
当地名古屋ではいくつか飲食ビルの新築計画があるが、コロナの影響を受けて建築が見送られて更地のままになっているものもある。すでに完成したビルは予定していた出店テナント計画やコンセプトを変更せざるを得ない状況。

家主がとる対応

ビルオーナー、貸主はどのような対応をとるべきだろうか。家主側も明確な判断ができず、当社のような不動産コンサル・管理会社に対応をゆだねることもある。

賃料の猶予、減額、免除

”賃料交渉に応じる理由”は先の記事を参照してほしい。コロナ初期は今後飲食業がどうなっていくのか想像もつかなかった。飲食店の営業が続けられず退去することとなった場合に次のテナント入居は見込めるのか、ということをぼんやりとイメージすることしかできなかった。誰もが経験したことのない危機に対し、コンサルとしてどのような助言をすればよいか非常に頭を悩ませた時期でもあった。
コロナ発生から約1年が経過し、その判断の結果があらわれてきた。前述したように飲食店退去後の区画はいまだに新規入居がみこめず空室のままとなっているものが目立つ。
当社が扱う物件の中でも家主の事情により一切の減額に応じなかった物件は、その後すぐにテナントが廃業することになった。(この事例では幸い次のテナントの入居が決まったが、それは飲食店ではなく事務所仕様での契約であった)
本日時点では、飲食店の新規出店ニーズはほとんど見込めない。たまたまコロナ前に結ばれた契約で出店が決まっていた店舗には”この時期に出店できる店”として出店オファーが殺到したらしい。
賃料交渉に対し、貸主はどのような対応をとるべきだろうか。今も非常に難しい決断といえるが、”コロナ収束までは貸主からの協力も積極的に行う”というのが個人的な方針。
しかし、オーナーまたは物件によって事情が異なる。飲食店以外の仕様にできるか。借入の返済はあるか。取り壊しの予定があるか。売却の予定はあるか。相続の予定はあるか。
様々な事情によってとるべき対応が変わってくることは言うまでもない。結論を出せないときは信頼できる専門家に相談してみるのも良い。
次に家賃交渉の現場の一例を記す。

家賃交渉に対する回答の実例

※下記はコロナ第3波への対応。初期の対応は別記事参照。当社の取扱い以外に独自に聞き取りした回答も含む。
  • 賃料減額交渉に積極的に応じる。ただし、借入返済の事情もあり減額割合は少な目。4割減額を3か月。(飲食専用物件。現店舗に長く継続してほしい)
  • 賃料減額に応じる。2割減、2か月間。(借入返済なし。資金余裕のある家主。飲食以外に転換可)
  • 賃料減額に応じる。初期の減額内容と同一。
  • 賃料減額に応じる。ただし、定期建物賃貸借契約へ変更。
  • 賃料支払猶予または預り保証金から充当に応じる。半年後から猶予分を上乗せして返済。(暫定的処理)
  • 一切の減額に応じない。(飲食店以外に転換可能な物件)
  • 年末年始の売上減に対する補助金等の施策が不透明。年明けまで回答を先延ばし。
  • 出店時に家主側が自己資金投下しており返済あるため応じられない。(退去となると更に返済厳しくなるが)
オーナーの懐事情が判断に与える影響は大きい。仮に退去があった場合、次の入居が見込めるかどうかも判断材料のひとつ。

別用途へコンバージョン

飲食店退店後の区画をオフィス仕様に変更する例も出てきた。飲食店の新規出店ニーズは非常に少ないため募集業態を変更した例。
店舗物件をオフィス仕様に変更して募集するこの対応は今後増えてくると思う。当社が取り扱う物件でも飲食店舗退去後にオフィスへ仕様変更して新規入居を獲得した事例がある。これには仕様変更に伴う資金投下の問題や、飲食店と比較して賃料水準が低くなる問題がある。他に、設備の故障時の対応や退去時の原状回復など注意しなければならない点が多い。オフィス仕様への変更・転換については別記事でふれたい。
2020/12/25 随時更新予定